ワインはただの飲み物ではなく、その一滴一滴には長い歴史と深い文化が込められています。
特に、ワイン愛好家の方にとって、ワインボトルの形状やサイズの背後にある物語や意味を知ることで、ワインをより深く味わうカギとなります。
この記事では、ワインボトルの750mlという標準サイズやその形状に隠された歴史や文化的背景を掘り下げ、ワイン選びや楽しみ方を一層豊かにするための知識について紹介していきます。
□ワインとワインボトルの豊かな歴史
ワインボトルがなぜ750mlなのかの理由について見る前に、まずはワインやワインボトルの歴史について見ておきましょう。
ワインの歴史は紀元前6000年頃にさかのぼります。
その起源は、ロシアとイランの間に位置するコーカサス山脈一帯であり、この地域の国々、特にジョージア共和国は、ワイン造りの最古の痕跡を持つ地として知られています。
ジョージアで発掘された陶器の壺「クヴェヴリ」は、ワイン造りが始まった紀元前6000年頃のものと推定されており、この時期からワイン造りが行われていたことを物語っています。
しかし、現在私たちが使用しているガラス製のワインボトルの歴史は、ワインそのものの歴史に比べると比較的新しいものです。
ガラス瓶がワインの保存や運搬に適した形で登場したのは17〜18世紀のことで、それまではワインは主に樽で保存されていました。
ガラス瓶の登場により、ワインの瓶内熟成が可能になり、ワイン造りにおいて新たなスタイルが生まれました。
特に注目すべきは、瓶底のくぼみです。
これは熟成中に発生する澱を溜めるための工夫であり、ボトルの形状が進化する過程で生まれた特徴の一つです。
また、ボルドー地方のワインは「いかり肩」タイプのボトルが使われるようになり、これは澱を瓶の底に溜め、注ぐ際にグラスに入らないようにするための工夫が施されています。
このように、ワインボトルの形状には、ワイン造りと熟成の技術が反映されており、それぞれの形状が持つ意味や機能を知ることは、ワイン愛好家の方にとって興味深い探求の旅となるでしょう。
□なぜワインボトルは750mlなのか
ワインボトルの750mlというサイズが世界標準となった理由には、興味深い歴史的背景があります。
このサイズが選ばれた背景には、イギリスとフランスの間の歴史的な取引が深く関係しています。
イギリスでは昔から「ガロン」という単位が使われており、1ガロンは4.5Lに相当します。750mlというサイズは、このガロン単位で計算すると非常に便利で、1ダース(12本)のワインがちょうど9L(2ガロン)となり、取引がしやすいサイズだったのです。
また、フランスのボルドー地方では、225Lの樽がワインの主流の容量として使われていました。
この樽から直接ワインをボトルに詰めると、750mlのボトルがちょうど300本分となり、生産から消費までの流通過程が非常にスムーズに行われるようになりました。
このような便宜から、750mlというサイズがワインボトルの世界標準として定着したのです。
この背景には、ワインを生産するフランスと、それを大量に消費するイギリスとの間の歴史的な関係が影響しています。
ワインボトルのサイズが750mlと定められたことは、単に便宜上の理由だけでなく、ワインの生産と消費の歴史を反映した結果であると言えます。
ワインボトル一つを取っても、そこには深い歴史と文化が刻まれており、それを知ることでワインをより深く楽しめるのです。
□産地が生み出したボトルの多様性
ワインボトルの形状とサイズが産地ごとに異なるのは、その地域のワイン造りの歴史、文化、そしてワインの特性が密接に関連しているからです。
例えば、ボルドー型のボトルは「いかり肩」の形状が特徴で、澱を瓶の底に溜めやすくする設計がなされています。
これは、ボルドー地方の赤ワインの特徴である豊かなタンニンと澱を考慮したものです。
また、ブルゴーニュ型のボトルは「なで肩」で、ブルゴーニュ地方で生産されるピノ・ノワールやシャルドネなどのワインの特性に合わせたデザインがなされています。
さらに、ドイツやフランスの特定地域では、フルート型のスリムなボトルが使用され、これは主に白ワインやスパークリングワインの特性に適しています。
これらのデザインは、ワインの種類、産地の気候、土壌、ワイン造りの技術といった要素が複雑に絡み合い、形成されています。
各ボトル形状の背後には、長い年月をかけて培われた地域ごとのワイン造りの伝統と文化があり、ワイン愛好家にとってはそれを理解することが、ワインをさらに深く楽しむカギとなります。
□まとめ
ワインボトルの形状やサイズは、単にワインを保存するためだけではなく、そのワインが生まれた地域の文化や歴史、そしてワイン造りにおける独自の技術や哲学が反映されています。
このように、ボトルを選ぶことは、そのワインの背後にあるストーリーを知ることでもあります。
ワイン愛好家の方であればあるほど、ボトルの形状やサイズに込められた意味を深く理解し、ワイン選びや楽しみ方を一層豊かにできるでしょう。
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