
大統領が愛した、スロバキアワインの源泉
スロバキア中部、緑豊かなトポロチアンキー村。
この地のワイン造りの歴史は、なんと1723年に遡ります。当時、カグレヴィッチ伯爵がダルマチアから熟練のブドウ栽培者を招き、ブドウ畑の礎が築かれました。
転機が訪れたのは、1918年に誕生したチェコスロバキア共和国の時代。初代大統領トマーシュ・G・マサリクがこの地を気に入り、1923年から1935年にかけて毎夏を過ごす大統領の夏の離宮としてトポロチアンキー城を利用しました。
彼の滞在中、地元産のワインは政治・文化の公式訪問の食卓に必ず登場。その評判はプラハにまで広がり、ワインは瞬く間にモダンで人気の高い嗜好品となったのです。
歴史、文化、そして大統領の愛が重なった場所 —— それが、今もなおスロバキアを代表するワイナリーとして世界にワインを届けているシャトー・トポロチアンキーです。
「シャトー・トポロチアンキー」ブランドの誕生

時は1933年、まだ世界が不安定な鼓動を刻む時代。
「シャトー・トポロチアンキー」の名を冠した最初のワインが造られました。ひとつの夢が、トポロチアンキーという地に根を下ろします。
当時のチェコスロバキア政府は、国内にワイン産業の象徴を築くため、 トポロチアンキー の地に国営ワイナリーを設立しました。
注目すべきは、当時のエチケットデザイン。
初めてボトルに貼られたエチケットには、 トポロチアンキー城の前に立つ民族衣装の少女と、遠くにそびえるタトラ山脈 ——
ワインという液体に、スロバキアという国の「こころ」と「かたち」を封じ込めた小さな物語だったのです。
このワインが語るのは、ただの味わいではありません。
時代を越えて、なお語り継がれる“魂の継承”です。
そして1947年、このワインはついにアメリカへの初輸出を果たし、
スロバキアの名を世界へと届ける第一歩となったのです。
トポロチアンキーにおけるワイン造りの再生と進化
伝統を継ぎ、未来へ醸すシャトー・トポロチアンキー

1993年、トポロチアンキーのセラーは民営化され、わずか6名のスタッフからワイナリーの再出発が始まりました。この地に根ざしたワイン造りの伝統と、地元の熟練醸造家たちの技術が、再生の礎となったのです。
現在、シャトー・トポロチアンキーは、第一次チェコスロバキア共和国時代から続く伝統を繊細に蘇らせた代表的ワイナリーとして高く評価されています。
革新と品質へのこだわり
現代のワイン造りでは、旧式のプレス機に代わり、ブドウを優しく搾る最新の空気圧式プレス機を導入。発酵は16〜20℃の温度管理のもと、ステンレスタンクで丁寧に行われ、テロワールを表現するふくよかでエキス分豊かなワインを生み出しています。
赤ワインの多くは、伝統的な大樽で熟成され、深みと複雑さを備えた味わいに仕上がります。
自社畑と地域との共生
品質向上のため、技術革新に続いて取り組んだのが自社畑の開発。
現在では420ヘクタール以上のブドウ畑を所有し、地元の栽培農家とも協力して、安定した品質のブドウを育てています。
「伝統 × 革新」を掲げ、シャトー・トポロチアンキーは、これからもスロバキアワインの未来を切り拓いていきます。
ブドウ畑から始まる品質へのこだわり

「ワインの品質は畑から始まる」
─それがシャトー・トポロチアンキーの信念です─
年間を通じての丁寧な農作業と、豊富な水資源、理想的な気候条件が調和することで、健全で完熟したブドウが実ります。これは、ワイン造りにおける最も重要な要素であり、テロワール(風土)を映し出す高品質なワインを生む鍵となります。
最適な土地への品種選定
日照や気温など、ブドウの生育に必要な条件を考慮し、経験豊かな栽培家たちが品種ごとに最適な土地を厳選。
グリューナー・フェルトリーナー、ゲヴュルツトラミネール、ミュラー・トゥルガウ、サン・ローランといったクラシック品種に加え、ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・グリ、ブラウアー・ポルトギーザー、ネロネット、アリベルネ、 そしてスロバキアならではの傑作「デュナイ」など注目の品種も積極的に導入しています。
“知られざる宝石”たちが、ここに静かに輝いているのです。
自社管理のブドウ畑
現在、ニトラ地域と南スロバキア地域にわたって420ヘクタール超の自社畑を所有。テロワールの個性を最大限に活かしたブドウ栽培を徹底し、歴史あるブランド「シャトー・トポロチアンキー」の名にふさわしいワインを育んでいます。
スロバキアの魂を宿すワイン
そして今日。
シャトー・トポロチアンキーは、年間約500万本ものワインを世界へと届けています。 そのすべてに込められているのは、土地の記憶、人の手の温もり、そして未来への希望。
もし、あなたがグラスを傾けるその瞬間、
その香りに、かすかな森の記憶を感じたなら、
その余韻に、遥かな風景を思い描いたなら、
――それは、きっとスロバキアの物語が、
あなたの心にそっと語りかけたからなのです。
参考サイト
シャトー・トポロチアンキー公式サイト
https://www.vinotop.sk/