貴腐ワインもアイスワインも、両方とも甘口のワインです。別名デザートワインとも呼ばれており、食後のフルーツなどと一緒に楽しむ方も多いワインの種類です。同じ甘口のワインということで混同されやすいですが、貴腐ワインとアイスワインは明確に異なるものです。
今回は、貴腐ワインとアイスワインの違いについて解説します。貴腐ワインを美味しく飲むための方法も併せてご紹介するので参考にしてみてください。
□甘口ワインについて
貴腐ワインやアイスワインは、「甘口ワイン」や「デザートワイン」と呼ばれています。ワインの甘さを表す方法は、ワイン1リットルあたりに対して、糖分がショ糖換算でどのくらい残っているかで表されます。ジュースと比較するとワインの甘さはそれほど強くはありません。糖度が同じでも酸味が弱ければ甘さが目立ち、酸味が強ければさわやかで上品な味になります。
ここでは、その甘口ワインがどのように作られているかをご紹介します。
1つ目は、発酵を止める方法です。
この方法は、カジュアルな価格帯の甘いワインによく使用されます。 収穫時のブドウの糖度は正常またはわずかに高いため、 元の甘さを保ちながら、冷却または亜硫酸の添加により発酵を止めます。そうすることで、ワインはさらっとした甘さになります。 途中で発酵を止めるため、アルコール度数はやや低くなります。
2つ目は、レイトハーベストについてです。
甘くてアルコール度の高いワインを作りたい場合は、元のブドウの糖度を上げる必要があります。収穫を遅めて、ブドウの糖度が上がるのを待ちます。糖度が十分に高いブドウを木に残しておくと、様々なリスクがあります。鳥に食べられたり、雨が降るとカビが発生したりする危険性もあります。 そのため、収穫期の天候が安定している地域でしか作られません。
3つ目は、アイスワインについてです。
18世紀末にドイツのフランコニア地方を襲った寒波の影響で、収穫前であった完熟ぶどうが凍ってしまいました。冷凍ブドウは通常のワインの製造には使用できないため、廃棄する必要があります。 しかし、廃棄するのはもったいないという考えから、冷凍ぶどうを絞って醸造してみると甘みのあるワインになりました。 ブドウの水分が部分的に凍結し、残りの果汁は非常に甘く濃縮されていました。この偶然から、アイスワインが生まれたとされています。
ちなみに、「アイスワイン」は登録商標であり、ドイツ、カナダ、オーストリアでのみ製造できます。 他の地域でも同じ方法で製造しても「アイスワイン」と呼ぶことはできません。また、ドイツには「アイスワインが生産しても良い最低気温」があります。 冷凍されていても、マイナス7度以下になるまでアイスワインとして製造、販売することはできません。 ただ冷凍庫でブドウを凍らせるだけでは、アイスワインと呼ぶことはできません。
近年、 地球温暖化の影響によりアイスワインは希少になっています。アイスワインは、元々冷凍されていた水の量によって収量が減少するため高価です。
4つ目は、貴腐ワインについてです。
川のそばの畑では、霧の発生によりボトリティス・シネリアという菌が白ぶどうに付着することによってカビが生えます。カビはブドウの皮に穴を開けて、水分を蒸発させるため干しブドウのようにしてしまいます。一見腐ったブドウのように見えますが、発酵させることで、素晴らしく甘いワインになります。
このように、同じ甘口ワインの中でも製造方法によって種類は分けられており、アイスワインと貴腐ワインは全く異なるワインの種類になります。次の章でそれぞれの違いをより詳しく見ていきます。
□貴腐ワインとアイスワインの違いとは
貴腐ワインとアイスワインは、色や味が比較的似ているために混同されることがよくありますが、製造方法は大きく異なります。先程もご紹介したとおり、貴腐ワインは先述のとおり菌により貴腐化したブドウを用いて作ります。アイスワインは、冷凍したブドウを用いて作られます。
このように作り方は異なりますが、貴腐ワインもアイスワインも甘みのあるワインになります。貴腐ワインとアイスワインと比べると、ボトリティス・シネリアという菌が生み出す貴腐香があります。
貴腐ワインと違ってアイスワインは貴腐香がありません。そのため、さわやかで軽く、シンプルな味わいになります。 味によっては、貴腐ワインは熟成ワインや香りのよいリキュールが好きな人に人気があり、アイスワインは甘さが好きな人に人気があります。また、貴腐ワインは熟成に耐え、希少であるため、アイスワインよりも価格が高くなります。
□貴腐ワインを美味しく飲むための方法とは
貴腐ワインは飲む前に冷蔵庫に入れて、冷やしてから飲むと良いでしょう。冷やすことによって、貴腐ワインが持つ甘さを楽しめます。また、貴腐ワインは冷蔵庫に入れておくと、抜栓から2週間から1ヶ月は美味しく飲めます。そのため、グラスに少量を注いで飲むのも良いでしょう。グラスの中のワインの温度が上がることで香りや味が変化します。
□まとめ
この記事では、貴腐ワインとアイスワインの違いについてご紹介しました。貴腐ワインを冷蔵庫で冷やしてから味わいながら飲むと美味しく飲めるので、ぜひワインの味や香りを楽しんでください。貴腐ワインやアイスワインをお求めの方は、お気軽にご相談ください。