皆さんは、スロバキアとチェコが元々は1つの国だったことをご存知でしょうか。かつて中欧には「チェコスロバキア」という国がありましたが、1993年に「チェコ」と「スロバキア」に分離しました。今回は、どうしてスロバキアとチェコは分離したのかについて説明します。
□スロバキアはどんな国?
スロバキアは、ヨーロッパの中央部から東部に位置し、ポーランドやウクライナ、ハンガリーなどの5カ国に囲まれています。国の西端に首都ブラチスラバが位置する内陸国で、国土の80パーセントが丘陵地や山岳で、40パーセントが森林です。
戦後は社会主義体制の国であり、1969年にはチェコとの連邦制になりましたが、その背景には両国の文化や民族の違いがあります。宗教では、無信仰が多いチェコに対して、スロバキアはカトリックが60パーセント以上、ハンガリー人が人口の約10パーセントを占めています。
そうしたことから、非社会主義の新たな体制へ移行した1993年に、チェコと平和的に分離して新国となりました。この分離は、「ビロード離婚」ともいわれています。
伝統的にスロバキアは農業国でしたが、現在は電子機器や自動車が基幹産業で、ドイツやチェコと経済的に強い関係を持っていて、NATO、EUに加盟しています。
□チェコとスロバキアはなぜ分離した?歴史的背景の違い
そもそもスロバキア人とチェコ人は同じ西スラブ族であり、5世紀から6世紀に現在のボヘミアとスロバキア、モラヴィアに移住してきました。
当時は同一の民族で、共通の言語を持っていたと考えられますが、長い歴史的発展を経て、異なる言語となり、異なる民族意識を形成するようになりました。
チェコは歴史的にオーストリアやドイツの影響を強く受けて、抑圧にも耐えながら多様な文化を発展させました。
宗教改革の先駆者であるフスや、音楽家のスメタナとドヴォルザーク、作家のカフカなど世界に大きな影響を与えたチェコ出身者は数知れず、当時のチェコは、宗教、産業、言論、文化などあらゆる面で中欧の先進地域でした。
それに対して、スロバキアは長い間ハンガリーに支配され、「北ハンガリー」と呼ばれる時期もありました。そのため、経済的・政治的にハンガリーとの繋がりが強い地域となりました。
スロバキアは、長い間ハンガリー平原への一次産品供給地として据え置かれていました。そのため、スロバキアはチェコに比べて宗教、政治、産業、文化などあらゆる面で遅れを取っていました。
そんな両者が統合された際に、チェコ人がスロバキア人に対して、指導的立場に立つことが多く、そしてそれに対するスロバキア人の反発心によって、チェコ人とスロバキア人の間には、長期にわたる相互の不信感がありました。
政治面でもチェコ人は、スロバキア人よりも一歩先を進んでいたので、チェコスロバキア国家は、長い間チェコ人優位な体制となっていて、スロバキア人はいつも「被支配者」になっていました。
1918年のチェコスロバキア独立の時から、チェコ人が政治的な主導権を握っていて、共産党支配下でもスロバキア人は分離志向を持つとして弾圧されました。チェコスロバキアは「プラハの春」によって連邦制となり、スロバキアはチェコと対等な社会主義共和国となりました。
しかし、正常化政策によってプラハの中央集権化が進められ、スロバキア人の期待は裏切られました。このような歴史的背景があったために、チェコスロバキアは分裂したといわれています。
□スロバキアのテロワール
スロバキアは、フランスのボルドーやブルゴーニュと同じくらいの緯度に位置している国です。大陸性気候で、気温は地域によって変わりますが、夏の最高気温は35度、冬の最低気温はマイナス25度という大きな寒暖差があります。
スロバキアワインの産地は、南スロバキアワイン産地、小カルバディア山脈のワイン産地、東スロバキアワイン産地、ニトラワイン産地、トカイ、中央スロバキアワイン産地の6つがあります。
各地域には固有の土壌気候があり、それらに合わせたブドウ品種が植えられています。特に、ブラチスラヴァ周辺にあるカルバディアの丘は、花崗岩に基づいていて、ピリッとした酸味や優れたミネラル、花の香りがワインにもたらされます。
南スロバキアのなだらかな丘はドナウ川に向かって傾斜していて、熟し丸みのある味わいのワインが生み出されます。中央スロバキアは国内で最古のブドウ畑があり、長期熟成型のワインが生み出されます。トカイはハンガリーと同じ土壌が広がっていて、リポビナ、フルミント、イエローマスカットを使った貴腐ワインが造られています。2010年以降には、トカイで造られる貴腐ワインもトカイワインと名乗れるようになりました。
□まとめ
スロバキアとチェコが分離した理由について、お分かりいただけましたでしょうか。当社では、スロバキア産のワインを販売しておりますので、スロバキアワインの味わいを楽しみたい方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。