はじめに

高貴なる腐敗と書く貴腐。その名の貴腐ワインとは貴腐ブドウから造られる甘口白ワインのことです。

そして、世界三大貴腐ワインとは、フランスのソーテルヌ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイ・アスー・エッセンシアです。

貴腐ブドウとは?

貴腐ブドウとは、その名の通り「高貴なる腐敗」のブドウで、見た目は捨ててしまいたくなるようなカビだらけのしおれたブドウです。

皮の薄いブドウ、セミヨンなどの果皮に貴腐菌(ボトリティス・シネレア菌)がつくと、この菌の菌糸が果皮に小さな穴を無数にあけます。その無数の穴から、果実の水分が蒸発し、果汁の中の成分が濃縮されます。この状態を「貴腐果」「貴腐ブドウ」とよします。そして、このブドウから黄金色の甘口ワインが造られるのです。

カビだらけのまま収穫され醸造されるので、この菌により様々な物質が造り出され複雑な風味も生まれるようです。菌とブドウは貴腐ワインを造るには切っても切れない重要な関係と言えると思います。

ソーテルヌではどうして貴腐ブドウができるの?

貴腐菌(ボトリティス・シネレア菌)は黒ブドウにつくと灰色カビ病を引き起こす、非常にやっかいな菌でもありますが、セミヨンなど果皮の薄い品種につけば貴腐ブドウになることができます。ソーテルヌではこの貴腐菌が繁殖しやすい立地なのです。

ブドウが熟した秋に、ガロンヌ川支流のシロン川は水温が低く、暖かいガロンヌ川と合流する地点ではそれぞれの川の水温の違いで朝霧が発生します。この霧がソーテルヌの畑を覆いますが、午後には太陽によって畑は温められ、この気象により貴腐菌が発生しやすくなるとのことです。

おわりに

貴腐ワインは干しブドウ状態のブドウから造るので、例をあげると特1級のシャトー・ディケムでは、1本のブドウの樹からグラス1杯の貴腐ワインしかできないそうです。とても貴重なワインですね。

ソーテルヌの貴腐ワインは、熟した果実の香り蜂蜜の風味をもち、味わいは甘さとともに果実味・酸味・苦味もあり複雑な印象のワインです。

フォアグラとも相性は良く、ブルーチーズとも抜群、チーズの塩気とワインの甘味のバランスは最高といえます。